『VTuber Fes Japan 2021』1日目に参加した話

バーチャルYouTuber、通称VTuberが集う音楽フェス、『VTuber Fes Japan 2021』の1日目に現地参加してきた。元々は去年の4月に開催予定だったものが延期されてようやく開催出来たという経緯があるらしい。実は最近まで開催すること自体を認知しておらずチケットも当然取っていなかったが、VRアイドル『えのぐ』が出演するという情報を目にしたので概要を見たところ、豪華な出演陣だったので参加したいなと思うように。

 

(1日目 参加者一覧)

 

Vtuberには明るくなく、全く知らないアーティストも結構居たが、上記したようにVRアイドルの『えのぐ』が好きだったのと、似通った路線で活動している『GEMS COMPANY』も良い楽曲を出していたので気になった。にじさんじの初期はそこそこ見ていたのでJK組は馴染みがあったし、キズナアイ、ミライアカリといったビッグネームが出演していたのもあって参加を決めた。一部楽曲では生バンド演奏が行われるという前情報にも背中を押された。

 

 (1日目 セットリスト)

 

セットリストは上記。序盤と終盤で生バンド演奏が行われ、中盤にはバーチャル中田ヤスタカ(バーチャル中田ヤスタカ??)によるDJコーナーも用意されるという構成になっていた。個人ではオリジナル楽曲を披露、コラボではネットカルチャー発の楽曲をカバーするといった流れが大半だったように思う。VTuberは自身のチャンネルで『歌ってみた動画』を投稿することが多いため、それきっかけで聴いたことがある楽曲も多かった。全然知らない楽曲もあったが。。

1曲目の『シャルル』や楓と美兎ユニットによる『ロキ』などの有名楽曲が生バンド演奏で聴けたのは単純に嬉しかった。『からくりピエロ』も好きだったのでイントロが聞こえた時はテンションが上がった。フェスはやはりこういうのが良い。

名取さなさんは動画を見たことが多分無かったのだが、萌えの具現化という感じで恐ろしかった。会場のファンたちのボルテージも名取さなさんの登場で相当上がっていた印象である。バーチャル中田ヤスタカ(バーチャル中田ヤスタカ??)とキズナアイさんの『AI AI AI』は順当な選曲ではあったが盛り上がった。事前アナウンスでスタンディングもジャンプもOKと言われていたのもあってか会場の一体感が凄かった。

と、こんな感じで印象に残った点を挙げていくとキリがないので、個人的にベストアクトだったと思うもの三点を以下に記すことにしたい。

 

1. えのぐ『e☆Jump!→Dream!! ⇨ it's 笑 time! ⇨ スタートライン』(メドレー)

個人的に一番のお目当てだったえのぐ。配信分を観返したところ、彼女たちに与えられていた持ち時間は6分間だった。1曲をフルで披露することも出来ただろうが、彼女たちはメドレーを選択したようだ。そしてこれは最適解だったように思う。

えのぐのライブに現地参加するのは初めてだったが、配信されているライブを何度か見た事がある。彼女たちのライブパフォーマンスはパワフルでフレッシュで、何よりライブに賭ける熱量が本当に大きいことが従前から感じられた。数多くのライブを披露して経験値を蓄えていた彼女たちが、メドレーという形式を選んだのは必然だったのかもしれない。

アッパーな『e☆Jump!→Dream!!』で開始早々から会場に圧倒的なライブ感を投下する。歌唱はCD音源から大きく離れたライブ仕様で、会場を煽る煽る。卓越したモーション技術を存分に駆使して、側転やジャンプを絡めてステージ上を縦横無尽に駆け回る。『e☆Jump!』の1コーラス目が終了するとシームレスに次曲『it's 笑 time!』へ。

『it's 笑 time!』は1、2を争う大好きな曲だが披露されるとは思っていなかったので、メドレーの衝撃も相まって面食らった。コミカルなダンスが可愛らしいが、歌唱は同様にパワフルでライブ仕様。生バンド演奏でないのは本当に勿体なかったが、グルーヴ感溢れるこの楽曲もまた会場を沸かせていた。

最後の披露となる『スタートライン』は丁度1年前、それまで5人体制だったえのぐが4人体制に移行したのと同時期に生まれた。メンバーの卒業という現実に衝突した際、それでも彼女たちが目標として掲げる「世界一のVRアイドル」を目指すべく、新たな一歩を踏み出した時の楽曲だ。1コーラス+ラストサビで披露されたが、間奏の僅かな時間の中でこの「世界一のVRアイドルになる」という目標を力強く宣言、「私たちがVRアイドル、えのぐです!」と会場に知らしめた。

6分間という限られた時間の中で、上述した全てが巻き起こった事実に感嘆するしかない。持てる総力を濃縮してぶつけて見せたその姿は本当に天晴れで、これぞフェスの在り方だという感じがした。素晴らしいものを見ました。ベストアクトです。

 

 

2. GEMS COMPANY『ゴールデンスパイス』 

GEMS COMPANYのライブはおよそ1年前、2020年の新年早々に行われたアイドルフェスで見たことがあった。グループの人数が多くステージが一杯になる程なのだが、そんな全員の3Dモデルが所狭しと動いている図はそれだけでもう圧倒的で面食らった。音楽制作をMONACAが手がけており良曲揃いなのも素晴らしい。

『ゴールデンスパイス』は特にMONACAらしい楽曲で、こういう言い方は良くないのかもしれないがWake Up, Girls!の『少女交響曲』や『極上スマイル』と似た雰囲気がある。本当に盛り上がる楽曲で、会場も大いに沸いていた。

そしてやはり、9人が同時にステージに立って歌っている絵面の迫力が凄まじい。激しいダンスでフォーメーションがぐるぐると入れ替わり、飛ぶ跳ねる座る。軍服チックなジャケットで統一された衣装、更には事前にメンバーの水科葵が『からくりピエロ』でその歌唱力を魅せつけていた事もあり、圧倒的なカリスマ軍団オーラが溢れ出ていた。可愛らしくて格好良くて、見入ってしまいました。メンバーカラーのスポットライト演出も最高にキマってて美しかった。

 


3. ミライアカリ『ILLUMINATE』

『バーチャル四天王』とも呼ばれるミライアカリさんは、間違いなくVTuberブームの火付け役となった一人だろう。公演中には猫宮ひなたさんと共にMCを務めるなど、歴史的な功績も含めて、この『VTuber Fes Japan』の立役者と言っていいと思う。

彼女の名の通り「明るいミライを」という願いを込めた、そんな前振りがあって披露された新曲『ILLUMINATE』は「Twinkle Twinkle Little Star」という歌い出しから始まり、背景には流れ星を模したアニメーションが駆け抜ける。これらの演出に加えて楽曲も非常にエモーショナルで、早々に心が震えるのを感じた。

ミライアカリさんのライブパフォーマンスを見るのは初めてだったが、心の底からライブを楽しんでいる様子が垣間見え、そんな笑顔がとても眩しかった。3Dモデルは頭身が高く系統としては美人なのだろうが、彼女自身の明るいキャラクターと可憐なパフォーマンスも相まって元気で可愛らしい印象が強く、アイドル然としていた。

楽曲のラスト、アウトロが鳴り響く中で「まだまだ続く、VTuber Fes Japan!最後まで楽しんでいってね!」と笑顔で叫ぶ。フェスお決まりの定型文なのかもしれないが、彼女の嘘偽りない本心であるように受け取っている自分がいた。ライブ終わりのMCでも「バーチャル、大好きかー!?」と会場に投げかけ、「バーチャルと人間に境は無い」と言ってのける。バーチャル文化の特異点である彼女自身が誰よりもこの文化を愛している、もしそうならこれ以上に素敵な事があるだろうか。

バーチャル存在に心を動かされる事象には、どこか倒錯めいたものがあるように感じられる。それは作品に登場するキャラクターに対するそれとはまた毛色が異なる。身体性と共に歴史を更新しながら育っていく、不確かなようで確かにそこにいる、そんな存在にどう向き合うべきなのか。乱暴に言えば3Dモデルが、絵が動いているだけ。そのようにしてこの文化に対して壁を作っていた面が少なからずあったかもしれない。

だが結局そこにはリアルな手触りの感情があった。何のことはない、対象が生身だろうが仮想だろうが、偶像に対する精神活動に大きな差異は無いのだろうと思った。その回答が自分の中に無かったのは変な感じだった。何となくわかった気になっていたのかもしれない。でも真の意味で実感したのは『ILLUMINATE』の最中、川口総合文化センターの一席での出来事だったのである。

 

 

という訳で、個人的ベストアクトとして三つ挙げた。VTuberのライブ、というものが殆ど初めてだったのでその補正が大いにあるかもしれないが、興奮と発見に満ちた時間だった。

三つに限らず全体を通して非常に素晴らしいフェスだったし、参加出来て良かったなと心底思った。今回のフェスで新しく知った、深く知りたいと思ったVTuberも数多くいる。

ちなみに2日目も配信で視聴したがこれも非常に良かった。1日目、2日目共にまだ見逃し視聴出来るみたいだし、冒頭の数十分に関しては無料公開されているようなので気になった人がいればぜひ。ベストアクトに挙げたえのぐの出演部分は無料公開部分に入っている。

 

VTuber Fes Japan 2021 DAY1【1/30】【GoToイベント対象公演】 - 2021/01/30(土) 17:00開始 - ニコニコ生放送

VTuber Fes Japan 2021 DAY2【1/31】【GoToイベント対象公演】 - 2021/01/31(日) 17:00開始 - ニコニコ生放送