くろろのたのしいディスカバリー(2021年4月)

 

恩田陸蜜蜂と遠雷』(2021.4.2 視聴)


別記事にまとめた。小説、映画共に良かった。映画を見たのが4月だったのでこちらに。

 

 

鬼頭莫宏なるたる』(2021.4.17 読了)

なるたる(1) (アフタヌーンコミックス)

なるたる(1) (アフタヌーンコミックス)

  • 作者:鬼頭莫宏
  • 発売日: 2012/11/05
  • メディア: Kindle
  • オススメ度: ★★★★★★★☆☆☆
 

『ぼくらの』の作者である鬼頭さんの作品。不条理展開やグロ描写などが多く、その道では根強い人気を誇るようだ。ミミズジュースと試験管のシーンは有名らしい。個人的にはそれに対する復讐のシーンがスカッとした。

線の細い絵柄は儚い印象を受け、そんなキャラクターが大変な目に遭っていくのはなかなかにハートブレイキング。選民思想や、世界と自分のどちらを変えるべきか、などなど根深いテーマを扱っていて読み応えもあった。竜や蛇をモチーフにしており、西洋思想や聖書もベースにあるようである。

コマ割りや時間の切り取り方が巧みで、ある意味で漫画漫画していない気もした。漫画的な誇張が少なく、無機質かつフラットに場面が転換していく。台詞に関しても、声に詰まる感じだったり、返事になっていないような返事だったり、リアルに寄せた作りになっていたように思う。

 

 

Re:ステージ!ワンマンLIVE!!~Chain of Dream~ トロワアンジュ公演(2021.4.18 参加)

【Re:ステージ! 】「トロワアンジュ」ミニアルバム「CAMPANELLA」

【Re:ステージ! 】「トロワアンジュ」ミニアルバム「CAMPANELLA」

  • アーティスト:TROISANGES
  • 発売日: 2018/03/07
  • メディア: CD
  • オススメ度: ★★★★★★★★☆☆
 

久々に参加したライブイベント。トロワアンジュはリステの中でダントツで好きなユニットなので、ユニットの単独ライブがあるというのは非常に有難い。キャラデザに引っ張られているだけかもしれないが、あの頃のエロゲソング的な雰囲気があってオタクの柔らかい所に突き刺さる。

『エンゼルランプ』が特にフックになった楽曲だったので聴けて良かった。二回披露されたが、正直なところ個人的には一回で良かった気もする。一回目の感動が変に上書きされたような気がしてしまった。19年のライブで披露されなかったということもあったので、その采配も良く分かるのだが。

 

 

かなちーくず

にじさんじのゲーム配信勢。Apexの大会に参加するために結成されたトリオで、掛け合いが面白い。切り抜きを見まくってしまった。

これの影響もあってApexを始めたが、時間が幾らあっても足りないような気がしてきたのでアンインストールを検討中である。こうやって時間を食うものを避けていくと、結局面白いことが無くなっていくのかもしれないが。

 

 

図解 聖書 [世界史徹底マスター] (2021.4.28 読了)

図解 聖書 [世界史徹底マスター]

図解 聖書 [世界史徹底マスター]

  • 作者:大島力
  • 発売日: 2014/02/07
  • メディア: Kindle
  • オススメ度: ★★★★★★☆☆☆☆
 

Kindle Unlimited対象だったので軽率に読んだが良書だった。この手の本は他にもいくつかあったが、一番レイアウトや構成がわかりやすかったと思う。 断片的にしか知らなかった知識が体系的に纏められていて、一本の線に繋がったような気がする。エヴァは顕著だけど、やっぱり聖書をベースにした作品というのは多いんだなと改めて思った。

 

 

飛び立つ君の背を見上げる (響け! ユーフォニアムシリーズ)  (2021.4.29 読了)


 別記事作成済み。中川夏妃という人間臭いキャラクターの魅力が詰まった、紛う事なき名作の青春小説。

 

 


 

 

DISCOVERY

DISCOVERY

  • アーティスト:Mr.Children
  • 発売日: 1999/02/03
  • メディア: CD
  • オススメ度: ★★★★★★★★★★
 

 

くろろのたのしいディスカバリー(2021年3月)

月ノ美兎『月ノさんのノート』(2021.3.6 読了)

月ノさんのノート

月ノさんのノート

  • 作者:月ノ美兎
  • 発売日: 2021/03/01
  • メディア: Kindle
  • オススメ度: ★★★★★☆☆☆☆☆
 

にじさんじ』の委員長こと月ノ美兎さんによるエッセイ本。委員長が落としてしまったノートを拾ってこっそり読んでいる、という設定が読者には課せられる。

配信で触れ辛いような際どい話題など、本音に近しい文章が書き綴られていて面白かった。リアルイベントでの出待ちの話なんかは非常にスリリング。

本音に近しいと書いたのは、公式媒体ということもあってブレーキもある程度感じられたからである。ここに記されているのは氷山の一角であって、更なる深淵がディープウェブには広がっている気がしてならない。

 

 

 ARIA The CREPUSCOLO(2021.3.6 視聴)

ARIAの劇場版第2弾。第1弾はARIAカンパニーに所属する灯里とアリシアに焦点が当たっていたが、今回はオレンジプラネットのアリスとアテナを巡ってのストーリーがメイン。なんかボロ泣きしてしまった。

劇場版と言いつつも割とベタな展開だったりするが、これまでの積み重ねが重厚なのもあってそれでも涙腺を刺激してくる。刺激的で変化の激しいシナリオでなくとも、日常と人間関係の機微を丁寧に描くことで内側からじわじわと浸食されていくような。時間が経って様々な変化があっても、そこは一貫してARIAであり、佐藤監督が守っているものであるように思った。

上映後にはキャスト舞台挨拶があり、ライブビューイングで視聴。キャスト陣の作品愛だったりARIAが繋げてきた縁が垣間見えた気がして感動的な時間だった。

最終章となる第3弾は姫屋の二人がメインとなる。この二人が一番好きなので、また映画館ですすり泣くオタクになってしまう未来が見える。

 

 

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||(2021.3.8 視聴)

 

 

公開日に視聴。感想書こうかと思ったけど荷が重かったので断念。謎モチベで『甘き死よ来たれ』の和訳記事を書いたりした。

エヴァを改めて見返してやっぱり功績というか影響力が凄いなと思った。エヴァ以前とエヴァ以後で語られるのも頷けるなと今更にして思った。 

 

 

ここなつ『ホシノメモリー

ホシノメモリー (特典なし)

ホシノメモリー (特典なし)

  • アーティスト:ここなつ
  • 発売日: 2021/03/17
  • メディア: CD
  • オススメ度: ★★★★★★★☆☆☆
 

ひなビタ♪』 内に登場する姉妹ユニット『ここなつ』の新アルバム。

ひなビタ♪』関連のストーリーは追わなくなってしまい(そもそも更新がほぼないのだが)、去年に行われたここなつのライブ配信も見ていない。『ここなつ2.0』の意味も良く分かっていないのだがそれはさておき、このアルバムはとても良かった。

各曲それぞれ異なるコンポーザーが楽曲提供を行っていて、トリビュートアルバム的な性格も有しているように思う。だが一方でコンセプトアルバムとしても成立しているからすごい。タイトルとジャケットから想起させるイメージが崩れることなく、アルバム全体で統一されていた。

 

 

enogu 3rd Anniversary Live - 臨戦態勢(2021.3.20 参加)

日本橋三井ホールで開催されたえのぐの3周年記念ライブに参加。『臨戦態勢』と銘打たれ、「戦う準備は出来てる?ーー私たちは、出来てるよ。」というキャッチコピーが掲げられるなど、非常に好戦的かつ煽情的なライブだった。彼女たちが自身を武闘派と称するのも納得である。

これまでのライブではMCの時間が多めに取られる傾向にあったが、今回はMCを意図的に短くしてパフォーマンスの濃度を上げたことを後日に語っていた。伝えたいことはパフォーマンスで語る。そういう姿勢は本当に格好いいと思う。現地参加したがそのエネルギーはひしひしと感じられた。

この状況なので発声はなし、スタンディングも禁止という環境だったのは残念である。観客を煽ったり盛り上げたりとライブの空間を作るのが上手なグループだと思うので、それが奪われてしまうのはかなりの逆風だと言える。厳しい期間だと思うが頑張って欲しい。頑張って欲しいとしか言えないのがもどかしいが。

余談になるが、ライブ中に地震が来たのだがその時の対応が冷静で恰好良かった。

 

 

坂本真綾 25周年記念LIVE「約束はいらない」(2021.3.21 参加)

 

別記事にまとめた。15周年ライブから10年経つのか……と感慨深くなった。

 

 

文野環  

にじさんじ2期生、野良猫こと文野環さんに相当ハマってしまった。3月の最後の方はずっと動画を漁っていたような気がする。

自由奔放なスタイルで発言も予想外の角度からのものが多く、見ていて飽きない。作りこまれたエンタメとは違った面白さがある。パーソナルな部分も魅力的で、基本的には斜に構えてイキっているというキャラクターロールを見せるが、努力家な一面があったり真面目な場面では人格者だったりするのが好き。

麻雀素人のイロモノとして卓に呼ばれていた彼女が、麻雀大会への参加決定を機に猛特訓を行い、その実力を伸ばしていく軌跡は素晴らしかった。大会で結果を残せなかった際には分かりやすく落ち込んでおり、ゲームであっても手を抜かず本気で取り組む姿勢には後追いながらも心を打たれた。

 

 

中島愛『green diary』『Curiosity』

green diary [通常盤] [CD]

green diary [通常盤] [CD]

  • アーティスト:中島愛
  • 発売日: 2021/02/03
  • メディア: CD
  • オススメ度: ★★★★★★★★★☆
 
Curiosity

Curiosity

  • アーティスト:中島 愛
  • 発売日: 2018/02/14
  • メディア: CD
  • オススメ度: ★★★★★★★★★☆
 

2月に発売となったアルバム『green diary』を少し遅れて聴いたがとても良かった。1曲目の『Over & Over』の韻踏みが心地よくて好き。テンポや曲調が変化していくのも面白い。tofubeats作曲の『ドライブ』もチルいサウンドと中島さんの歌声のマッチが素晴らしかった。イマイチだな、と感じる楽曲は一切なく、『メロンソーダ・フロート』のようなアニソン・声優ポップスど真ん中の素直なストレートもあり、非常に完成度の高いアルバムだと言える。

前作である『Curiosity』もほぼ未聴だったので聴いてみたが、こちらも素晴らしい。『最高の瞬間』を聴いている時は最高の瞬間である。フライングドッグの歌の上手い女は最高。

『水槽』はリリース時に結構聴いていたのだが、アルバムに進まなかったのが勿体ない。まあでもこのタイミングで辿り着けたから良いのか。

 

 


 

 

DISCOVERY

DISCOVERY

  • アーティスト:Mr.Children
  • 発売日: 1999/02/03
  • メディア: CD
  • オススメ度: ★★★★★★★★★★
 

 

武田綾乃の『飛び立つ君の背を見上げる』(響け!ユーフォニアム 小説)

 

 

読んだ。控えめに言って最高だった。

響け!ユーフォニアム』シリーズの主人公は黄前久美子であり、基本的には久美子の視点に立った文章が紡がれる。しかし今作では久美子と同じく低音パートに所属する一つ上の先輩、中川夏紀が主人公となり、物語も彼女の視点から語られる。

作中において、中川夏紀は高校3年生。吹奏楽部は既に引退しており、卒業式を間近に控えているという状況だ。そんなモラトリアムの真っ只中、彼女の同級生である傘木希美、鎧塚みぞれ、吉川優子の3人との関係性に焦点を当てる形で物語は進行する。

夏妃は趣味でギターを弾いているのだが、元吹奏楽部の友人である若井菫から軽音楽部の卒業公演のオープニングアクトを頼まれ、優子とのツインギターによる即席バンドでそれに出演する……というのが物語の軸になっている。

 

夏紀視点の三人称で書かれる地の文が非常に良かった。夏紀は自身の性格も悪さに関して自覚的であり、斜に構えた人間であることを理解している。更にはみぞれという才能の権化が間近にいることも手伝ってか、自らが凡人であり決して恵まれた才能の持ち主ではないことを自認している。

吹奏楽に対しても特別な思い入れを見せることはなく、その内面世界は非常に現実主義的でドライである。彼女は高校1年生の時に初心者として吹奏楽を始めた上に、練習についても滝が着任するまではサボり気味だった。才能はおろか努力の総量においても本気で取り組んでいる人間には太刀打ち出来ない、という地に足の着いた諦観がそこにある。

無関心・無気力ともつかない俯瞰とニヒリズムに彩られた彼女の哲学は、しかし非常に等身大かつ人間的であり、読み手の共感を誘うリアリティを有している。"翼を持たない"側の人間であることを、過剰に自認する夏妃。そんな彼女が、残り僅かな高校生活の中で何を感じ、何を思うのか。彼女が"飛べる"瞬間はあるのか。あるとしたら、その相棒になるのは。

 

上記したように夏妃のニヒルで醒めた視点からの描写も良かったが、随所で見え隠れする脆さや、不意に感傷的になる部分もまた人間らしさであり、それが同時に彼女の魅力にもなっている。「吹奏楽に関する思い入れを見せることはなく」と書いたが、これはある種の自己暗示的な側面もあると言えよう。今後はもうユーフォニアムを気軽に演奏出来ない、という事実に気付いた際の心情には胸を打たれた。

心情描写に限らず、風景描写やモチーフとなるオブジェクトの登場のさせ方なども素晴らしい。武田綾乃さんは自分と同い年らしいが、今後更に筆力が伸びていくとすると末恐ろしいものである。

 

恩田陸の『蜜蜂と遠雷』

3月の中頃に読んだ。

ブックオフで安かったのでハードカバー版を買ったのだが、二段組で530ページというなかなかのボリュームだった。持ち運びが億劫なので家でしか読まなかった結果かなり時間がかかった。今は上下巻で発売されているようなのでそちらにすればよかったと思う。それか電子書籍。

ピアノコンテストが作品の舞台。群像劇的に様々な人物の目線からコンテストを描くことで、繰り返される1次予選、2次予選と新鮮なままのテンションで続いていく。多角的にコンテストを描写することで単調になりがちなのを回避していた。演奏を終えた、もしくはこれから演奏を行う予定であるコンテスタントの目線からも演奏が描かれる。コンテストが進むに連れてコンテスタントの境遇も当然変化していくので、その心理描写が面白かった。

音楽というものへのリスペクトであったり捉え方も美しい。音楽が狭い世界に閉じ込められてしまっている、そんなテーマが描かれた。音楽とはそもそも自然の音から始まったものだが、今では人間の窮屈な認識下に押し留められている。作中でギフトと称される風間塵はそんな音楽を救い出さんとする。

音楽に対してストイックに(側から見たらの話であって、本人からすれば日常なのだが)向き合う存在、その描き方もかっこ良かった。音楽を芸術と捉えれば、文芸に歳月を捧げてきた恩田陸さんの筆致に説得力が漲るのも納得するところである。あくまでも小説なのだが、芸術に関して説いた文章でもあるように感じられた。

映画化されているようだったが含め関連情報を入れないようにして何とか読み切ることが出来た。心象風景の描写が非常に多い、というか大半がそれである。拙くても自分自身の脳内で風景を描きながら読むのがこの小説の醍醐味であって最も適した向き合い方であるように思う。他人によって解釈し映像化されたそれを見てしまうとどうしても引っ張られてしまう気がしてならない。

と、ここまで書いた上で映画を観てみた(Prime Videoで400円だった)のだが、これが予想に反してというか非常に良かった。もし毒にも薬にもならないような映画化だったら残念だなと覚悟していたのだが、原作とは大きく異なるアプローチが随所に見られて楽しかった。群像劇なので誰を主人公にしても成立する物語と言えるが、そのチョイスや見せ方含めて非常にいい映画だったと感じる。上述した心象風景の描写に関しても、やり過ぎていなかったのが良かったと思う。

『祝祭と予感』という後日談的な続刊があるようなので今度読むつもり。

 

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

  • 作者:恩田陸
  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: Kindle版
 
蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

  • 作者:恩田陸
  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: Kindle版
 
蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

  • 発売日: 2020/03/08
  • メディア: Prime Video
 

 

坂本真綾 25周年記念LIVE「約束はいらない」に参加した話

坂本真綾さんの25周年記念LIVE「約束はいらない」に参加してきた。2021年3月20日と21日の2days公演だったが、2日目のみの参加。

会場は横浜アリーナで、センターアリーナ形式での開催。会場の中心に展開された円形のセンターステージがメインの舞台となる。

上から見た場合に八角形(何角形だったか忘れたので適当)を作る要領で、このセンターステージの外周を複数枚のパネルが囲っていた。パネルは半透明に透けていて、映像を出力すればスクリーンにもなる。ライブ中、基本的には天井付近まで引き上げられカメラの映像が流れているのだが、楽曲によってはこれがステージに降りてきて演出装置としても使われる。このスクリーンパネルは、2019年の大晦日に開催された年越しライブでも使用されていた気がする。もしかしたらそれ以降のライブでも使われているのかもしれない。

コロナ渦での開催ということで収容率を抑え、座席の間隔を空けての開催であった。空席が生まれる訳だが、そこには演出装置としての固定ペンライトが準備されており、ライブ中の演出に合わせて自動的に発光する仕様となっていた。また発光装置付きのリストバンドも観客に貸与され、これも自動的に発光するものだった。

真綾さんのライブではペンライトの使用はあまり推奨されないが、色がごちゃごちゃして見栄えが悪いからというのがあるのかなと勝手に思っている。その点で、今回の自動発光ペンライトやリストバンドは景観を損なわないので良いかもしれない。ある程度の規模にならないと実現出来ない演出であろうが。ステージにも会場にも凝った演出が施されていた中で、ライブは開始した。

 

01. 約束はいらない
02. CLEAR
03. スクラップ~別れの詩
04. ユーランゴブレット
05. オールドファッション
06. いつか旅に出る日
07. 独白
08. 躍動
09. 色彩(内村友美とのデュエット)
10. sync(内村友美とのデュエット)
11. あなたじゃなければ(堂島孝平とのデュエット)
12. レコード(堂島孝平とのデュエット)
13. ひとくちいかが?(土岐麻子とのデュエット)
14. DOWN TOWN(土岐麻子とのデュエット)
15. gravity
16. 序曲
17. birds
18. メドレー
     -ループ
     -ヘミソフィア
     -逆光
     -奇跡の海
     -Private sky
     -トライアングラー
     -マジックナンバー
     -指輪
     -光あれ
19. 誓い
20. プラチナ
21. ポケットを空にして(オフボーカル)

 

開幕でライブのタイトルにもなっている『約束はいらない』を披露。デビューシングルということもあり、メモリアルライブの幕開けにふさわしい楽曲だったと言える。そこから『カードキャプターさくら クリアカード編』の主題歌である『CLEAR』、その後には『スクラップ-別れの詩-』、『ユーランゴブレット』と攻撃的な楽曲が続いた。『オールドファッション』は収録アルバムの中でも特に好きな楽曲なので嬉しかった。

『Duets』で共演した豪華ゲストを招いてのコーナーでは、まず最初にla la larksの内村友美さんが登場した。真綾さんに高難易度楽曲を投げつけてきたla la larksだが、実際に『色彩』を美しく歌い上げるのだからすごい。こんな難しい楽曲を書くなんて人の心が無いのか?と思っていたが、自分でも歌えるのなら文句のつけようもないだろう。

堂島さんとのデュエットも素晴らしくて、ハモりが本当に聴き心地が良かった。『レコード』の二人の歌声には聞き惚れるしか出来なかった。土岐麻子さんとのデュエットも本当に凄い。二人での『DOWN TOWN』にはアニメオタクもニッコリである(土岐さんが『DOWN TOWN』をカバーしていたのは知らなかった)。

デュエットが終わってからは 『gravity』、『序曲』とバラードでしっとりと聴かせつつ、『birds』へ。静寂から徐々に盛り上げて、終盤で高らかに飛ぶ展開は素晴らしい。そしてこれのステージ演出がとても良かった。スクリーンパネルがステージを囲った状態で楽曲がスタートしたが、見方によってはその様が鳥籠のようにも感じられた。楽曲終盤にはスクリーンパネルが上方へ引き上げられていったのが、曲調に合わせて鳥籠が開かれていくようで物語性を感じた。最後にはミラーボールまで出てきたが、乱射する光が観客席を照らし出すのが美しかった。観客席を綺麗だと感じた経験はあまり無かった。センターステージを生かした演出で良かったなと思う。

 

その後は代表曲を中心としたメドレーを披露。これの前後でMCの時間があったのだが、そこでは比肩出来ないキャリアを築いてきた彼女だからこそ紡げる言葉が聴けたように思った。

25年という活動期間の中では当然多くの苦労があり、そしてその都度たくさんの人に支えられてきたという。でもそれでも、スタッフでも、ファンでも、彼女の25年間を丸々全て見てきた人間は居ない。坂本真綾の全てを知っているのは、坂本真綾自身ただ一人だけなのだと、そう彼女は語った。25年間という長い"線"。そこに内側から携わってきた、あるいは外側から魅了されてきた、そんな一人一人のことを彼女は"点"であると称した。

どの瞬間で出会って、坂本真綾を知ったのか、それは人それぞれ異なる。そしてその出会いは、デビューしてからアーティスト活動を絶やすことなく継続してきた、坂本真綾の『音楽』と密接に結びついている。自分の視点で言えば、『カードキャプターさくら』との出会いが坂本真綾との出会いでもあり、だからこそ『プラチナ』は思い出の楽曲だ。夕方に何となく見ていた『ツバサクロニクル』の『ループ』もだし、意識的に坂本真綾という存在を追いかけ始めた頃のタイアップである『こばと。』の『マジックナンバー』も外せない。これが人によって様々なのは当然である。

だからこそ彼女はセットリストを作る際に悩んだという。全員にとっての100点満点のセットリストを作ることは不可能だ。メドレー形式に落ち着いたのもそういった理由からだと語っていた。

ファンはあくまでも"点"であって、その瞬間瞬間で坂本真綾と重なっているに過ぎない。もちろん全身全霊をかけて応援しているファンだって居るだろう。それでも、25年という年月の中で常にゼロ距離で居続けるのは難しい。今回のライブに久しぶりに参加した、という人も居るだろうし、初めての人も居るだろうし、このご時世だから今回のライブでは離れるという選択をした人も居るだろう。

重なっているのはあくまでも瞬間的な出来事であって、離れることも戻ってくることも自由なのだと思った。それは当たり前のことではあるが、今回のライブのタイトルである『約束はいらない』とも(偶然ながら)重なる。ライブを観に来ること、坂本真綾を追いかけること、きっと誰もそれを約束したわけではない。そしてこの先についても約束をする必要はない。

MC後の『誓い』ではステージ演出でスクリーンパネル上に光の粒が揺らめいた。それは星のようにも見えたし、先刻のMCを踏まえれば坂本真綾を取り巻く"点"でもあるように感じさせられた。その後の『プラチナ』では会場中にバブルが噴射されたが、これもまた"点"を表しているのではないかとさえ思えた。

遡ること11年前、『坂本真綾15周年ライブ "Gift"』に私は参加していた。坂本真綾さんと誕生日が同じということもあり、楽しくて感動的な気持ちになったのを良く覚えている。だがそんなギフトを受け取った時も、決して約束をしたわけではない。それでも25周年ライブの日、私はこの場所にやってきてこの空間を共有していた。誰に強制された訳でもないその重なりが非常に嬉しいのだった。 

 

Duets

Duets

  • アーティスト:坂本真綾
  • 発売日: 2021/03/17
  • メディア: CD
 
シングルコレクション+ アチコチ

シングルコレクション+ アチコチ

  • アーティスト:坂本真綾
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: CD