坂本真綾 25周年記念LIVE「約束はいらない」に参加した話

坂本真綾さんの25周年記念LIVE「約束はいらない」に参加してきた。2021年3月20日と21日の2days公演だったが、2日目のみの参加。

会場は横浜アリーナで、センターアリーナ形式での開催。会場の中心に展開された円形のセンターステージがメインの舞台となる。

上から見た場合に八角形(何角形だったか忘れたので適当)を作る要領で、このセンターステージの外周を複数枚のパネルが囲っていた。パネルは半透明に透けていて、映像を出力すればスクリーンにもなる。ライブ中、基本的には天井付近まで引き上げられカメラの映像が流れているのだが、楽曲によってはこれがステージに降りてきて演出装置としても使われる。このスクリーンパネルは、2019年の大晦日に開催された年越しライブでも使用されていた気がする。もしかしたらそれ以降のライブでも使われているのかもしれない。

コロナ渦での開催ということで収容率を抑え、座席の間隔を空けての開催であった。空席が生まれる訳だが、そこには演出装置としての固定ペンライトが準備されており、ライブ中の演出に合わせて自動的に発光する仕様となっていた。また発光装置付きのリストバンドも観客に貸与され、これも自動的に発光するものだった。

真綾さんのライブではペンライトの使用はあまり推奨されないが、色がごちゃごちゃして見栄えが悪いからというのがあるのかなと勝手に思っている。その点で、今回の自動発光ペンライトやリストバンドは景観を損なわないので良いかもしれない。ある程度の規模にならないと実現出来ない演出であろうが。ステージにも会場にも凝った演出が施されていた中で、ライブは開始した。

 

01. 約束はいらない
02. CLEAR
03. スクラップ~別れの詩
04. ユーランゴブレット
05. オールドファッション
06. いつか旅に出る日
07. 独白
08. 躍動
09. 色彩(内村友美とのデュエット)
10. sync(内村友美とのデュエット)
11. あなたじゃなければ(堂島孝平とのデュエット)
12. レコード(堂島孝平とのデュエット)
13. ひとくちいかが?(土岐麻子とのデュエット)
14. DOWN TOWN(土岐麻子とのデュエット)
15. gravity
16. 序曲
17. birds
18. メドレー
     -ループ
     -ヘミソフィア
     -逆光
     -奇跡の海
     -Private sky
     -トライアングラー
     -マジックナンバー
     -指輪
     -光あれ
19. 誓い
20. プラチナ
21. ポケットを空にして(オフボーカル)

 

開幕でライブのタイトルにもなっている『約束はいらない』を披露。デビューシングルということもあり、メモリアルライブの幕開けにふさわしい楽曲だったと言える。そこから『カードキャプターさくら クリアカード編』の主題歌である『CLEAR』、その後には『スクラップ-別れの詩-』、『ユーランゴブレット』と攻撃的な楽曲が続いた。『オールドファッション』は収録アルバムの中でも特に好きな楽曲なので嬉しかった。

『Duets』で共演した豪華ゲストを招いてのコーナーでは、まず最初にla la larksの内村友美さんが登場した。真綾さんに高難易度楽曲を投げつけてきたla la larksだが、実際に『色彩』を美しく歌い上げるのだからすごい。こんな難しい楽曲を書くなんて人の心が無いのか?と思っていたが、自分でも歌えるのなら文句のつけようもないだろう。

堂島さんとのデュエットも素晴らしくて、ハモりが本当に聴き心地が良かった。『レコード』の二人の歌声には聞き惚れるしか出来なかった。土岐麻子さんとのデュエットも本当に凄い。二人での『DOWN TOWN』にはアニメオタクもニッコリである(土岐さんが『DOWN TOWN』をカバーしていたのは知らなかった)。

デュエットが終わってからは 『gravity』、『序曲』とバラードでしっとりと聴かせつつ、『birds』へ。静寂から徐々に盛り上げて、終盤で高らかに飛ぶ展開は素晴らしい。そしてこれのステージ演出がとても良かった。スクリーンパネルがステージを囲った状態で楽曲がスタートしたが、見方によってはその様が鳥籠のようにも感じられた。楽曲終盤にはスクリーンパネルが上方へ引き上げられていったのが、曲調に合わせて鳥籠が開かれていくようで物語性を感じた。最後にはミラーボールまで出てきたが、乱射する光が観客席を照らし出すのが美しかった。観客席を綺麗だと感じた経験はあまり無かった。センターステージを生かした演出で良かったなと思う。

 

その後は代表曲を中心としたメドレーを披露。これの前後でMCの時間があったのだが、そこでは比肩出来ないキャリアを築いてきた彼女だからこそ紡げる言葉が聴けたように思った。

25年という活動期間の中では当然多くの苦労があり、そしてその都度たくさんの人に支えられてきたという。でもそれでも、スタッフでも、ファンでも、彼女の25年間を丸々全て見てきた人間は居ない。坂本真綾の全てを知っているのは、坂本真綾自身ただ一人だけなのだと、そう彼女は語った。25年間という長い"線"。そこに内側から携わってきた、あるいは外側から魅了されてきた、そんな一人一人のことを彼女は"点"であると称した。

どの瞬間で出会って、坂本真綾を知ったのか、それは人それぞれ異なる。そしてその出会いは、デビューしてからアーティスト活動を絶やすことなく継続してきた、坂本真綾の『音楽』と密接に結びついている。自分の視点で言えば、『カードキャプターさくら』との出会いが坂本真綾との出会いでもあり、だからこそ『プラチナ』は思い出の楽曲だ。夕方に何となく見ていた『ツバサクロニクル』の『ループ』もだし、意識的に坂本真綾という存在を追いかけ始めた頃のタイアップである『こばと。』の『マジックナンバー』も外せない。これが人によって様々なのは当然である。

だからこそ彼女はセットリストを作る際に悩んだという。全員にとっての100点満点のセットリストを作ることは不可能だ。メドレー形式に落ち着いたのもそういった理由からだと語っていた。

ファンはあくまでも"点"であって、その瞬間瞬間で坂本真綾と重なっているに過ぎない。もちろん全身全霊をかけて応援しているファンだって居るだろう。それでも、25年という年月の中で常にゼロ距離で居続けるのは難しい。今回のライブに久しぶりに参加した、という人も居るだろうし、初めての人も居るだろうし、このご時世だから今回のライブでは離れるという選択をした人も居るだろう。

重なっているのはあくまでも瞬間的な出来事であって、離れることも戻ってくることも自由なのだと思った。それは当たり前のことではあるが、今回のライブのタイトルである『約束はいらない』とも(偶然ながら)重なる。ライブを観に来ること、坂本真綾を追いかけること、きっと誰もそれを約束したわけではない。そしてこの先についても約束をする必要はない。

MC後の『誓い』ではステージ演出でスクリーンパネル上に光の粒が揺らめいた。それは星のようにも見えたし、先刻のMCを踏まえれば坂本真綾を取り巻く"点"でもあるように感じさせられた。その後の『プラチナ』では会場中にバブルが噴射されたが、これもまた"点"を表しているのではないかとさえ思えた。

遡ること11年前、『坂本真綾15周年ライブ "Gift"』に私は参加していた。坂本真綾さんと誕生日が同じということもあり、楽しくて感動的な気持ちになったのを良く覚えている。だがそんなギフトを受け取った時も、決して約束をしたわけではない。それでも25周年ライブの日、私はこの場所にやってきてこの空間を共有していた。誰に強制された訳でもないその重なりが非常に嬉しいのだった。 

 

Duets

Duets

  • アーティスト:坂本真綾
  • 発売日: 2021/03/17
  • メディア: CD
 
シングルコレクション+ アチコチ

シングルコレクション+ アチコチ

  • アーティスト:坂本真綾
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: CD