御影瑛路『空ろの箱と零のマリア (7)』の話
長期連載の末に完結したシリーズ。俺が高校生の頃から読んでいた。これはそのシリーズ最終巻に当たる。
この巻はいわゆる『ループもの』と呼ばれる内容になっている。ループを扱った作品が題材というか肝になる部分として据えるのが、『何万回に渡る繰り返し』と『繰り返しに伴う苦痛』だ。でもこれはあまりリアリティを伴っていないことが多い。『何万回に渡る繰り返し』など誰も経験したことがないのだから当然といえば当然だ。
そこまで多くのループもの作品を嗜んできた訳ではないけど、これまでに見た/読んだことのあるループものは、その『繰り返し』の部分が雑に感じることが多かった。「三万回に渡る繰り返しを経て、ようやく彼は彼女を救い出した」。「君に会うのは実はこれで13,455回目なんだ」。言うだけなら簡単だ。二万回でも五万回でも匙加減でどうにでもなる。
この作品は少し違う。確かに、決して驚くほどのリアリティがある訳ではない。しかし、妥協をしていない。正面から『繰り返し』に挑んでいる。安易な省略が無い。
絶望的な閉塞感。抜け出すことの出来ない繰り返し。発狂するキャラクター。その展開に飛躍はない。恐ろしく徹底的に、演繹的に進む。『繰り返し』の描写に割かれる頁数は百を越える。だからこそ、その先にある結末に唾を飲むし、納得する。
楽しい気分でサクサク読める作品ではないけど、考えさせられるテーマを扱った、読み応えのある大好きなシリーズだった。
このシリーズに関連した自分語りというか思い出語りというかそんな記事を以前に↓で書いてる。そういえば作品の内容に触れてなかったなと思って今この記事を書いてる次第。