ひなビタ♪紅葉祭り(倉吉まち応援プロジェクト)に見る萌えおこし
もう先月のことになりますが、KONAMIが主導するコンテンツ「ひなビタ♪」の舞台のモデルとなった、鳥取県の倉吉市に11月12日~14日という日程で行ってきました。12,13日は、『倉吉まち応援プロジェクト』と題された、「ひなビタ♪」と倉吉市がコラボしたイベントが開催されており、それに参加した形。
現地ではとても楽しめたし、「ひなビタ♪」の大きなテーマであるところの萌えおこし(萌え×まちおこし)に関しても肌で感じることが出来たので、その辺りを振り返ったり整理したり紹介したりをこの記事で少しでも出来たらなと思います。
少し長くなりそうなので簡単なもくじみたいなものを用意しておきます。
1.「ひなビタ♪」とは(前提共有)
2.「倉吉まち応援プロジェクト」について(前提共有)
3.イベントのようす、振り返り(感想)
4.地方創生と萌えおこしについて(考察・感想)
5.おわりに
こんな感じで進めたいと思います。
1.「ひなビタ♪」とは
(画像引用:イントロダクション|「ひなビタ♪」公式サイト)
「ひなビタ♪」を知らない人に向けて簡単に紹介を。と言っても、上に貼ったイントロダクション画像の説明文が簡潔にまとまっています。詳しく知りたいとなれば公式サイトを見るのが一番良いでしょうが、一応自分の言葉でも補足紹介してみます。
「バンドでまちおこし」というのが大きな出発点。主人公の山形まり花を中心に、5人の少女たちが、バンド活動を通じて彼女たちの住む日向美商店街を盛り上げていこうというのが根幹のストーリーです。
彼女たちはFacebookのアカウント(実際にあります https://www.facebook.com/hinabitter/)を共同で使っており、バンド活動の内容や、楽曲制作の進捗度合い、はたまた活動とは関係ない生活の一部分だったりを交互に書き込んで発信しています。楽曲が完成しそうになればお披露目のラジオを録って公開。やがてその楽曲がiTunesで配信されたり、CDになったり……といった展開を見せます。リアルタイム性が強く、フィクションとノンフィクションの壁を感じにくいのが特徴的かなと思います。
大きな節目でシーズンが区切られていて、2016年12月現在はシーズン5に当たるでしょうか。節目節目で、シーズンの楽曲がまとまったアルバムやミニアルバムが発売されています。
下記は、シーズン1~3の楽曲が収録されたCDアルバムを買ったときに書いた記事です。興味を持ち始めた頃に書いたものなので、書きながら勉強しながらという感じになっています。
執筆当初はストーリーを殆ど読んでおらず、純粋に楽曲だけ聴いてみようということで感想なんかを書いたりもしています。楽曲だけ聴く分にも素晴らしいし、曲から入るのはいい道なのかと思いますが、そこで止まってしまうと魅力半分。
イントロダクションにも書かれている「楽曲が出来るまで」であったり、「キャラクターの個性・関係性」といった要素が「ひなビタ♪」の真髄であり、強みと言える部分だと思うので、FBのストーリーを読み込んだ上で楽曲を聴くと更なる感動体験が待っています。
2.「倉吉まち応援プロジェクト」について(前提共有)
長々と書いてるのに全く「倉吉まち応援プロジェクト」の話が出てない上にこの章も前提の話なので駆け足で行きます。
さて、「ひなビタ♪ 」の舞台は倉野川という架空の都市であることが作中で示されています。この倉野川は鳥取県の倉吉市がモデルとなっていることが公式に明言されており、作中のテーマがまちおこしということもあって、「ひなビタ♪」と倉吉市が連携してのイベントがこれまでに数回開催されています。
今年の4月に『ひなビタ♪ 桜まつり』と題して、大々的なコラボイベントが開催。初のイベントだったことや、声優トークショーが開催されたこともあり、大盛況だったようです。8月にも『倉吉打吹まつり』に参加する形でコラボイベントが開催されました。
そして今年の11月には、『ひなビタ♪ 紅葉まつり』が開催される予定だったものの、10月の地震の影響でイベントは延期という形に。しかし、被災した倉吉市を応援しようといったコンセプトの元に、『倉吉まち応援プロジェクト』と名前を変更して、今回のイベントが開催されたのでした。声優トークイベントが延期になるなど若干の縮小はあったものの、キャラクターパネルの展示や、商店街と「ちくわメニュー」のコラボ等が実現し、イベントは盛り上がりを見せました。
という訳で、駆け足ですが「倉吉まち応援プロジェクト」の概要を記してみました。次の章では開催中の動きについて詳しく書いていきます。
3.イベントのようす、振り返り(感想)
やっとここまで来たかという気持ちですが、イベントの感想だったり簡易レポ等をしていきます。
これまでに「ひなビタ♪」との提携イベントは二度開催されていますが、自分は今回が初めての参加でした(Facebookを読み切ったのが今回のイベントの直前だったので…)。倉吉を訪れるのも初だし、そもそも鳥取すら初めてでした。
1日目、倉吉駅に着くとすぐにキャラクターパネルに迎えられます。感慨深くなりながら、日向美商店街のモデルとなっている赤瓦・白壁土蔵群方面へのバスに乗ると、そこでファンの方とお話する機会に恵まれ、結局二日間ずっと一緒に行動させてもらいました。
( 倉吉駅のお出迎えパネル。画像は見たことがあり、楽しみにしてたので感慨深いものがあった)
今回のイベントのメイン行事としては、「1.スタンプラリー」「2.キャラクターパネルめぐり」「3.ちくわメニュー食べ歩き」といったものが用意されていたので、二日間共にこれに乗らせていただく形で行動。オタクスマイルでパネルを探しながら一生分ちくわ食べました。ファンとしては外せない、念願の「ちくわパフェ」を食べることも出来ました(旅行中に2回食べた)。
ちくわメニューは、感動するほど美味しいとか、上品な味がするとか、正直そういう訳では決してないんだけど、気張らずに美味しく食べられるB級グルメというところで、商店街のあたたかさを感じながらいただくことが出来て良かったなと思います。
キャラクターパネルは商店街のお店に設置されていることが多く、ちくわメニューも飲食店で提供されているので、パネルやちくわを巡って商店街を歩いていると、色々なお店を訪れることになります。そして、商店街の皆さんと交流するチャンスも増えていきます。
1日目、翌日の定食メニューに悩んでいる中華屋さんの店主さんにメニューを考えて欲しいと言われて提案したものが翌日のメニューに本当に反映されていたり。
コラボイベントが既に終了した3日目にちくわパフェを提供している喫茶店に一人で行った際は、マスターと「ひなビタ♪」の話や、「ひなビタ♪」とコラボしてからの町の変化であったり、商店街のお奨めのお店、震災時の話、鳥取県と千葉県の関係など色々とお話させてもらいました。
とある雑貨屋さんでは、「ひなビタ♪のことがあまりわかってないから教えて欲しい!」という店主さんもいて、我々のオタク特有の早口にも嫌悪感を示すことなく耳を傾けてくれたということもありました。様々なファンと積極的に交流して、『ひなビタ♪×倉吉』というコラボにとても前向きで居てくださっている様子が印象的でした。
ちくわのパフェなんだよ…… #ひなビタ #倉吉まち応援プロジェクト pic.twitter.com/ey2tzmiII5
— くろろ (@0get_kuroro) 2016年11月12日
ちくわあんみつうまい #ひなビタ #倉吉まち応援プロジェクト pic.twitter.com/9HozXdJrRN
— くろろ (@0get_kuroro) 2016年11月13日
ロンロン定食、ボリュームが凄まじい。定食頼むと喜ばれます #ひなビタ #倉吉まち応援プロジェクト pic.twitter.com/8LIZNStOIM
— くろろ (@0get_kuroro) 2016年11月13日
1枚目が現実、2枚目が現実、3枚目が現実、4枚目が現実の写真です pic.twitter.com/XI5lhqlAbI
— くろろ (@0get_kuroro) 2016年11月14日
こんな感じではしゃいでました(なお、地元に戻ってきてから39.1℃の高熱を出す)。
なお、公式に準備されたイベントは「1.スタンプラリー」「2.キャラクターパネルめぐり」「3.ちくわメニュー食べ歩き」でしたが、普段から様々なイベントを主催している商店街のお店が、有志でファン同士が交流出来るような企画を用意して下さっており、いくつかそれに参加させていただくことも叶いました。
夜にスポーツバーを貸し切っての交流イベントでは、楽曲にちなんだオリジナルカクテルが提供されたり、スマブラ64がプレイ出来たり(オタクはスマブラが強い)、音源と映像を流してクラブみたいに盛り上がったりと楽しい時間を過ごせました。ここで仲良くなれた方も居たので良かったです。
2日目の昼には公園に集まって『倉野川音頭』を大勢で踊ったり、倉吉への応援メッセージを一人一人書いたりと、これまた粋な企画を開催していました。
ミライプリズム pic.twitter.com/zWSfvO1wVu
— くろろ (@0get_kuroro) 2016年11月12日
なぜかスマブラ64してる pic.twitter.com/fiAuSpNXXK
— くろろ (@0get_kuroro) 2016年11月12日
と、そんな形で、公式・非公式関わらず様々な企画に参加させていただけて、暖かく楽しい時間を過ごすことが出来ました。鳥取に来る前は「つまらなくなって暇になったらどうしよう」みたいな心配もありましたが、まだ周り足りないくらいなのでまたイベントがあれば参加したいなと思いました。
撮影した写真は下記にも。まとまりが無いけどflickrのアルバムに突っ込んであります。
4.地方創生と萌えおこしについて(考察・感想)
ここからは、萌えおこしの可能性ということで、今回の訪問で萌えおこしについて感じたことや考えたことなどを書いてみたいと思います。仰々しいタイトルですが特にたいした内容はありません…
「アニメ系コンテンツ×地域イベント」といった催しに参加したことは殆どなく、最近だと「ハイスクール・フリート×横須賀」くらいでしょうか。これに関してもカレーやグルメ関連のコラボはありましたが、町全体をあげて大々的に、といったものではなかったかもしれません。有名なところだと「たまゆら×竹原」の竹まつりや、「花咲くいろは×湯涌」のぼんぼり祭り、「ガルパン×大洗」の大洗あんこう祭りは大規模に開催されている印象。これらにも参加したことはありません。
そんな訳で、ひなビタ♪×倉吉との比較対象が持てていない状態ではありますが、あくまで感覚的・主観的な部分をベースに好き勝手書いていく所存です。
地域住民×来訪者のコミュニケーション
今回のイベントで強く感じたのは、地域の人たちが「ひなビタ♪」とのコラボに非常に前向きに参加してくれているということです。当然、見えていない部分では反発などもあるのかもしれません(これに関しては取材不足)が、暖かく受け入れてくれている印象が強く残っています。そして、今回の来訪の満足度の高さの要因はここがとても大きいと感じています。
まちおこし活動への参加や地域創生についての勉強など微塵もしたことのない私ですが、萌えおこしでカギになるのは地域の住民と来訪者のコミュニケーションではないかと強く思いました。その際に、萌えおこしの『萌え』を担っているコンテンツが両者を繋ぐ役割を果たす形が理想的だと思います。
作品の話になった途端に饒舌になるオタクを、倉吉の人は毛嫌いせず、むしろ同じファンのような視点で受け容れてくれました。多くの人がそうだと思いますが、とりわけオタク気質の人間にとって、自分の好きなものの話を聞いてもらえるというのは嬉しいですし、相手が好意的に受け止めてくれれば、こちらも積極的に心を開こうという気持ちになるものです。好きな作品を媒介した際の歩み寄りの速さ、結びつきの早さ、そのハードルの低さというのは、オタク気質の人間の特徴として語られる機会も多いと思います。
事実、自分も商店街の人たちと「もう一度話をしたい」、「もう一度会いに行きたい」という風に感じています。「ひなビタ♪」が、倉吉の人々と交流するきっかけになったと同時に、歩み寄る際の後押しもしてくれたような印象があります。
考察と銘打ったからには一応結論のようなものを提示するとすれば、上で書いてきたような、作品を通じてのコミュニケーションの実現が萌えおこしには重要になると考えます。その実現のためには、地域の人がコンテンツのことを理解し、受け容れるということ。そして、コンテンツを橋渡しとした交流を試みることが必要なのかなと感じました。来訪者としても、コラボ商品やコラボグルメを楽しむだけでなく、その"場所"を楽しむこと。そしてその"場所"と一体の存在である、地域の人々とのコミュニケーションを図ることが大事だと思います。
公式サイド×地域住民のディレクション
前章で書いたコミュニケーションの実現には、地域住民の方々に依存する部分が大きくなりそうです。となれば、公式側から地域の人へのディレクションが必要になってくるかもしれません。そんな訳で素人目線ながらもそのディレクションについて少しだけ考えてみる。
実際にこうした地域コラボを行う際に、どのような説明が為されるのか、勉強会のようなものが行われているのか、その辺りしっかりとお話を聞くことは出来ませんでした。
ただ、某店主さんと会話した内容を反芻すると、どうも細かなディレクションは行われていなかったようです。某店主さんのお店にはキャラクターパネルが設置されていたのですが、「ひなビタとのコラボでパネル置くからよろしく」と唐突に言われ(店主さんによる表現)、「ひなビタ♪」やキャラクターの基本的なプロフィールが記述された資料を一枚渡されて説明はお終いだったと言っていました。
別のお店での話は聞けていませんが、おそらく似通ったディレクションだったのではないかと思います。実際にはこれが功を奏しているように思います。某店主さんは、「ひなビタ♪」について殆ど知識が無い状態でコラボイベントに臨んだ訳ですが、それ故かファンの方々に積極的に質問するなど、盛んな交流を実現しています。
以上からも、作品の内容に関する細かいディレクションは不要なのかもしれません。最低限の設定だけ共有して、あとはファンとの交流を促すようディレクションすることが重要ではないかと感じました。実際のディレクションがどんな形で行われているのかは、今後何かしらの地域コラボイベントに参加する機会があれば、その都度取材してみたいと思いました。
5.おわりに
そんな訳で感想とレポと勝手な主張が入り混じった記事になりましたがおしまいです。考察部分については取材不足の状態で勝手に書いているところもあるので話半分で読んで頂けると幸いです。
とにかく今回の旅行で倉吉という場所が好きになりました。次回以降は、旅行というよりも、田舎の親戚に会いに行くような気持ちになりそうです。それくらいにあたたかくて、穏やかな時間の流れる場所でした。
現在の『ひなビタ♪Facebook』は色々とすごい展開になっているのでハラハラしますが、また落ち着いた頃にコラボイベントがあれば良いなと思います。倉吉に帰りたい。
くろろのたのしいディスカバリー(2016年10月)
もう12月に入ってしまっているけど10月の振り返り。記憶も薄れつつあるので思い出しながら。
加納新太『君の名は。 Another Side:Earthbound』
詳しくは個別記事を作成済み。『君の名は。』 の世界に深みを与えてくれる一冊。個人的には必読本だと思います。
『91days』
10月に最終回が放送。めちゃくちゃ良かった。1クールの中でマフィア抗争や復讐劇における人間ドラマをしっかりと描いていて素晴らしい。ラストの美しさにはしばらく余韻に浸ってしまった。
アイドルマスター シンデレラガールズ『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Story 埼玉公演』(2016.10.15~10.16)
SSA公演の1,2日目にLVで参加。
1日目はブランドニューキャッスルと称して初期メンバー無しでの公演。重要な意味のある公演だったと思う。去年の3rdライブで感動させられた「Hotel Moonside~in fact」の流れを持ってこられて再度やられてしまった。その後に「あいくるしい」が来てだいぶ感情が持っていかれた。
2日目は初期メンバーによる公演。1日目と比べると、場数の違いによるトークの安定感が印象的だった。大坪さんがレモンタルトを食ってたのが最高だった。リハーサルでは口に入れすぎて歌えなくなってたというエピソードも最高だった。サプライズゲストで早見沙織さんが登場したときは死ぬかと思った。
原紗友里さんには今年も本田未央を見せてもらった。これだけでも足を運んで良かったと感じる。オレンジが似合う女性はなかなか居ない。
アイドル事変『It’s All Star☆Right彡/キラキラ』ほか
アイドル事変のCDを3種類購入。久保ユリカさんを贔屓目で見てしまっているのかもしれないけど『キラキラ』の楽曲は2曲ともお気に入り。『キラキラ』というユニット名に関してはどうしてこれにしたんだという気持ちになりますが…。
12月4日のライブに応募して当選したので楽しみ。ゲームの方はあまり触っていないのでCD曲しかまともに聴いてないけど、全体的に縦ノリの文脈を感じるのでライブは盛り上がるんじゃないかと思う。
小学館・久保ユリカ『奈良ノススメ (シリーズ 声地探訪)』
『声地探訪』というシリーズの第一弾として小学館より発売された、いわゆる地方ガイドブック。声優さんが出身地のお勧めスポット等を巡って、ガイドしてくれるというもの。今回は『奈良×久保ユリカ』ということで購入。久保さんは愛称が「シカコ」であるくらいに奈良県のイメージが強いので、こういった企画には起用しやすいように思う。
情報がコンパクトにしっかりと纏まっていて、10分もあればざっと読み切れる内容だった。写真の割合が多く、半分は声優さんのグラビア的な側面があるので、濃い情報をがっつり載せるという類のものではない。声優のファンでないと少し物足りないという印象を受けるかもしれない。(個人的には満足ですが…)
キャンプしたり河原でシチュー作ったりとアウトドアな活動が多かったのもあって、インドア活動が少なめだった。ポニーキャニオンのライブや奈良ノススメ発売イベントなど、久保ユリカさん関連イベントに参加出来ていないのが悲しいところ。
小説『君の名は。 Another Side:Earthbound』の話
「君の名は。」の小説版は二種類ある。一つは新海誠監督によって書き下ろされたもの。角川文庫より発刊されており、これはいわゆる「原作」的な立ち位置の作品となっている。映画の製作と並行して書かれたとのことなので、「原作」と呼ぶのは厳密には正しくないのかもしれないけど。
そしてもう一つは、いわゆる「スピンオフ」、「アナザーストーリー」的な立ち位置となる『君の名は。 Another Side:Earthbound』である。角川スニーカー文庫より発刊。これが非常に良かったの記事にしてみる。
この作品は大きく四つの章から成り、それぞれの章に主人公が立てられる。
①立花瀧(宮水三葉の身体に入っている)
②勅使河原克彦
③宮水四葉
④宮水俊樹
以上の四人であり、表紙に描かれている4人にスポットが当たる。映画と同じ時系列の中で進む章もあれば、映画よりも過去の話をやっているものもある。
新海誠監督の小説(以下『原作小説』)と映画の内容は殆ど同じだ。しかしながら文章と映像という媒体の違いによって異なる角度から『君の名は。』を見ることが出来る。風景描写に関しても、映画では映像で語られていたものが、原作小説では当然言葉によって語られるので、その違いも面白い。言うなれば、原作小説と映画は「縦の深さ」を相互に加えてくれる。
一方で、この『君の名は。 Another Side:Earthbound』は、『君の名は。』の世界に「横の広さ」を加える。本編で描かれなかった出来事が描かれる。またそれを通して、キャラクターの内面・パーソナリティといった情報が追加される。「本編のこのときに、こんな心境でいたのだ(/いたのかもしれない)」という見方が出来るようになる。「横の広さ」を知ることで、結果として「縦の深さ」が加わるという形である。まあ本作に限らず、スピンオフ作品は全般的にこうした性格を持つ。
本作の良かった点としては、「余韻の残る終わり方を見せる」というのがある。
スピンオフ作品ということになっているが、本編を知らないままこの作品だけ読んで楽しむのは難しいと思われる。何故かと言うと、起承転結が丁寧に展開される章が殆どないのである。導入部分は各章ともに最低限だし、各章とも本編に繋がる終わり方を見せる。(四章目に関しては例外で、起承転結があるように思える)。
本編における起承転結の「承」の部分を切り出して、様々な角度から詳しくやっているというのがわかりやすいかもしれない。「余韻の残る終わり方」というのはそういう意味で使っている。この作品内で何か結論が出るというより、この作品を知ることで、本編の様々な部分に対する見え方に変化が起こる(スピンオフとはそもそもそういうものかもしれないですが)。その影響の及ぼし方が、強すぎず弱すぎず絶妙で素晴らしい。
「君の名は。」にハマったクチであれば必読本と言ってもいいと思う。各章とも重要で、特に四章は作品全体の見え方が大きく変わる内容になっている。一章のラストシーンも、瀧と三葉の関係性を考える上で面白い。新海誠監督は登場人物の中で勅使河原にシンパシーを感じると言った旨の発言をしており、二章ではそんな勅使河原の内面が色濃く描かれている。
まだ行けてないけど、読んだ後にもう一度映画を見るときっと楽しいと思う。
くろろのたのしいディスカバリー(2016年9月)
9月の振り返り的な記事を作成。
■大今良時/山田尚子『映画 聲の形』(2016.9.17 公開)
京都アニメーションの新作映画。同タイトルの原作漫画を映画化したもの。
尺の問題などから原作を再構成するというのは、映画化において必要不可欠な手順。そうしたときに、『削られる部分』は必ず出てくる。大事になるのは、『削らざるを得なかった』なのか、『削ることが出来た』なのかだと思う。
この作品は後者だと感じた。パステルカラーの高明度な画面、石田へのフォーカス、結末部分の変更等で、原作の胸が詰まるような人間関係の重さが多少緩和されている。要するにいい感じに再構成出来てるなと思いました。
8月の『シン・ゴジラ』や『君の名は。』に続いて、いい映画を観る機会があって嬉しい。『登場人物の成長』にフォーカスした個別記事を作成済。うまく書けたような書けてないような記事。
■南條愛乃『南條愛乃 LIVE TOUR 2016 "N"』(2016.9.19 参加)
個人的な話として、音楽ライブに行く動機は大きく分けて二つある。
一つは「現地の熱を感じたい」、「盛り上がりたい」、「一体感を楽しみたい」というもので、アイドルもののライブなんかはこの目的で足を運ぶことが多い。もう一つは「生で歌声を聴きたい」とか「大音量や生演奏で曲を聴きたい」というもので、これは個人アーティストやバンドのときなんかに多い。もちろん両方というパターンもある。
後者に関連して、「いつの日か生で歌声を聴きたい」と強く思っていた声優アーティストが二人いた。一人は早見沙織さん。もう一人は南條愛乃さんで、こちらに関しては今回のツアーで望みを果たしてきた。パシフィコ横浜に参戦。
fripSideのボーカルとしても活躍する南條さんの歌声は、言うまでもなく素晴らしい。声優も歌って踊れなきゃいけない時代みたいに言われるけど、半分は賛成である。そうしないといけないかは置いておくとしても、確実に需要はある。(それでお金を稼いでしまう程に)声が美しい人が歌うのだから、当然といえば当然と言える。声優がソロデビューするのも、半ば必然ではあると思う。
サイリウムを消灯するよう促し、ステージ演出と歌声で魅せる時間帯があり、非常に素晴らしい時間だった。宝石のように美しい声は、『ヒカリノ海』のようなバラード曲のロングトーンで一際輝きを放っていた。一方でアップテンポな曲もあって、それがまた可愛すぎない程度の大人な可愛らしさなのがまた素敵。贅沢な音を聴くことが出来ました。目で見る分にも、衣装や演出といった面で楽しめた。
■ハイスクール・フリート『赤道祭 2016』(2016.9.24 参加)
はいふりのイベントに参加。BD買って応募したよ(BD買ったときの記事はこちら)。
イベント会場が格式がありすぎて本当にはいふりのイベントなのか心配になったけど、登壇キャストを目の前にすると負けず劣らずの豪華っぷりで凄かった。
色々と盛りだくさんだったけど、登壇キャスト全員で行った朗読劇が最高だった。納沙幸子の一人芝居を生で見ることが出来て感激。久保さんの朗読も貴重。
納沙幸子を演じる黒瀬ゆうこさんは、トークなどはまだ慣れていない感じがあるけど、役者モードになったときは圧倒的。紛う事なき実力派声優ですね。思い返すと、ナナシスのライブでもダンスやパフォーンマンスでキャラクターが完全に憑依していた。はいふり1巻のスペシャルブックでも、納沙幸子へのキャラクター理解の深さが凄かった。はいふりという作品への愛も深いようでした。
イベントの前後では横須賀をぶらぶら探索して海軍カレーを二種類食べた。はいふりとコラボしてる晴風カレーも食べられたので良かった。
横須賀を観光目的で訪れるのは初めてだったけど、ハンバーガーショップやバールが通りに点々とあって、アメリカナイズされた感じが見ていて新鮮だった。
■あまんちゅ!最終回上映会~新しい宝物が見つかる~(2016.9.25 参加)
あまんちゅ最終回上映会に参加。発売日に新宿ピカデリーのHPでF5連打して4列目を確保した。
良く考えると、劇場版でない通常放送のアニメを劇場で見るというのは初めての経験だった。OPの映像をスクリーンで見られたの非常に感激だった。OPのサビで、てこが懐中を見るところが、スクリーンで見ると飲み込まれそうになるほどの大迫力で、最高でした。1億円拾ったらプロジェクターとか用意して家に似たような環境を作り出したい。
上映後はキャストトークがあり、緩い感じで楽しかった。久保ユリカさんと、久保ユリカさん演じる『ちゃ顧問』にスポットを当てたコーナーがあり、これが盛り上がった。久保さんは司会進行役とクイズの出題者を兼任、喋ってる時間が多くて満足だった。
アニゲーイレブンや胃痛ラジオなど、メインパーソナリティを務める場となれば、当然しゃべりまくることになるけど、こういう色んなキャストが集まる場でがっつり司会をやって場を回していく姿は初めて見たので良かった。
いわゆるひな壇的なポジションに回ったときは、会話の中心になって引っ張っていくというより、随所で突っ込みを入れていく感じなので、口数が少なめになりがちな印象。まあその突っ込みのタイミングや言葉選びが絶妙だったりもするわけですが。あとは他のキャストがうまく喋れてないときにさり気なくサポートや補足をする姿も良く見る。優しい。
20時から開始で、千葉県民の俺の終電が危うくなるまでイベントは続いた(翌日は月曜)。嬉しいやら苦しいやら。
■太田英基『日本がヤバイではなく、世界がオモシロイから僕らは動く。』
TOEICで英語の意識が高くなった結果、グローバルな視点を養おうという意識が高まって買った本。個人的にかなり重要な本になった。
完全に受け売りではあるけど、俺くらいの世代だともうグローバル化の波から逃れることは出来ない。国内市場も軒並み衰退している中、終身雇用の日系企業でエスカレーター式に出世していける保証は無い。いずれ海外のビジネスマンと対等にやっていく必要が出てくる。
本書にも書かれている通り、頭の中の地図を『日本地図』から『世界地図』にする必要がある。何か新しいビジネスを考えるとき、顧客のニーズを考えるとき、「世界の誰が欲しがるか」を自然に考えられる脳味噌じゃないといけない。
そういう視点など全く無かったのでインパクトの大きい読書だった。著者は、25歳で英語力ゼロの状態から、留学で語学を鍛えて、世界一周の旅を敢行。各国のビジネスマンに会いまくってノウハウや人脈を構築、今は日本で留学支援の会社をやっている。かっこいい。
そんな訳で自身のキャリアを見つめ直す機会にもなった一冊だった。
そんな感じで終了。TOEIC試験にリソースを割いていて9月の記事更新自体が少なかったのもあり、ブログのことが頭からすっかり抜けてるような時期もあった。
なんだかんだで今年の1月から9ヶ月続いているので、とりあえず12月まで継続出来るようにしたい。この記事も最初は書くのそこまで乗り気じゃなかったけど、書き始めると結構いいアウトプットになった感覚はあるので、大事にしていく。
映画『聲の形』 感想 成長しないこと、欠落を埋めないこと
9/17に公開した京都アニメーションの劇場最新作『聲の形』。公開2日目に当たる9/18に見てきた。感想なり考えたことなり以下書いていこうと思います。
■内容以外について
まずは踏み込んだ内容以外の部分について。
原作は既読。率直な感想としては、原作から削ってあるエピソードもあったりで、後半で急展開だなと思う部分があった。ただ原作の時点でも何か急な展開だなと思っていた箇所なので、縮めて圧縮するとどうしてもそうなってしまうのは仕方無い部分かなと思う。
重い題材ではあるけど、笑えるシーンや救われる部分もあって、視聴後にキツい気持ちが残るということはなかった。結末部分も原作からだいぶ変わっていて、爽やかな終わり方だった。
演出面に関しては、音や声という、この作品にとって重要になる部分への配慮が為されていて、すごく気を遣って丁寧に作られているなと感じた。
音楽は画面の彩度に合った、淡いパステルカラーを想起させるような、優しくてでも楽しげなBGMが印象的。声優の演技に関しても、早見沙織さんを筆頭にしてすごい。手話のタイミングと合わせた、たどたどしいリズムでの喋り方も、違和感が無いように徹底されていると思う。
■内容について
内容の具体的なところの話。大体こっちを書きたくてこの記事を書いてる。
今回劇場版を見て、『聲の形』作品は成長を安易に描くことをしていない、と感じた。この点に絞って以下書きます。
本来、物語作品に求められるものは登場人物の成長だったり変化だったりする。キャラクターが何かしらの障壁にぶつかり、でも苦悩や努力の末に成長して、最終的にそれを乗り越える。感情移入していた視聴者はそこで歓びや勇気や感動やカタルシスを得る。というのが王道とされているストーリー構成。だと思ってる。
この作品では登場人物の小学校時代と高校生時代の二つの時系列が重要な時系列として描かれる。小学校時代に一つの『事件』を経験したキャラクターや周りの人々が、年月を経て再び集うことになる。
このキャラクターたちの本質は、高校生になっても小学生時代からあまり成長・変化していないように感じた。そして、作中の時間の流れにおいても、明確な成長や変貌を遂げる人物は少ないと思う。
例えば植野は最後まで素直じゃない。でも根はいいやつで、主張には最初から最後まで一貫性があって、自分のルールがちゃんとある。西宮を排除する前にだって一度手を差し伸べようとしている。川井は最初から自分が可愛くて正義感が強くて、でも善意の裏側に紙一重で存在する保身の醜悪さを最後まで自覚しない。佐原は最初から優しくて、でも最後までどこか臆病な自分は根っこの部分でついて回ってる。西宮は率直かつ大胆で、でもどこか不器用で下手くそだ。自分を蔑ろにする態度が他人を戸惑わせてしまう。
石田に関しては、ラストシーンで世界の顔と声を直視出来るようになる。これは明確な変化だけど、内面の成長で掴み取った実績という印象はない。石田は戸惑って涙を流してる。自分を仲間達が迎え入れてくれて、その暖かい場所から見るからこそ見える景色というか、そういう角度とか足場の問題のような気がする。
この辺りは俺のこじつけ臭い部分もあるのでアレなんだけど、でも成長物語という感覚はやっぱりなくて、上記したような角度とか足場とかタイミングとか、そういう問題なんじゃないかと思ってる。
成長とか変化って、現実の世界ではそう簡単に起こるものじゃなくて、脆いバランスで成り立ってるところに何かしらの刺激があることで、事態や関係性が好転したり悪化したりしてるだけなんじゃないかと。それを引き起こした刺激というのは、例えば西宮が転校してきたことだったり、石田が贖罪のために色々と動いたことだったり。
後半、遊園地のシーンで、植野のこんな台詞がある(うろ覚え)。
西宮さんが来なければ、私たちこんなことにはならなかったよね
これはかなり本質を突いていると思った。
西宮という刺激がなければ、確かにそうだったと思う。たぶんみんな仲良くやってる。役割とか立場とかが今と少し入れ替わるだけで、それなりに楽しくやってるんだろうと思う。揺さぶりによって崩れてしまう脆さは抱えていたとしても、その揺さぶりさえ無ければ、未熟で足りないなりにも、うまくやっていくことは出来たんだと思う。
キャラクターたちは全員、最初から最後まで良いやつだと思う。でも同時に、最初から最後までどこか欠けてもいる。この欠けてる部分っていうのを安易に埋めてしまったり、簡単に矯正してしまわないところが、この作品の特徴的な所だと思う。そういう矯正をやらないことで、上記したような関係性の変化がリアルに表現されていたと感じた。
欠落は誰にだってあるし、でもそれもパーソナリティの一つで、そこを伏せたり矯正したりせずにちゃんと描いているからこそ、キャラクターの人間味がはっきりと色濃く描かれていると思う。そういう醜い部分は視聴者だって持ってるから、それを突きつけられた気がしてはっとなる。この作品が強烈なのはそこに通じてる気がする。
そして逆説的に言えるのは、欠落があってもうまくいくケースだってある。どこか欠けている部分があっても、それを克服出来ていなくても、ハッピーエンドを迎えられることはある。劇場版の救いのあるラストはそれを示してくれている(と勝手に思ってる)。
そんな感じで終わります。まだうまく言葉に出来てない感じはある。こじつけてしまって頭が固くなってる感じもある。でもある程度ニュアンスが伝わる程度には書けた気がする。
小説も出てるっぽい。著者に吉田玲子の名。