ナナシス『EPISODE.QoP』が描く"band"の姿

Tokyo 7th Sisters -EPISODE.The QUEEN of PURPLE-

Tokyo 7th Sisters -EPISODE.The QUEEN of PURPLE-

 

 

band(名詞)の意味・用例

 

1.《音楽》バンド、楽団
2.〔同じ信念を持ち行動を共にする〕一団、一隊
3.〔動物の〕群れ
4.〔文化人類学の〕バンド◆人類が最初に作ったと考えられる、共通の目的を持って行動する小さな集団。

 

https://eow.alc.co.jp/search?q=band

ナナシスことTokyo 7th シスターズに登場する4人組バンドユニット、『The QUEEN of PURPLE』の結成から、デビュー曲である『TRIGGER』の制作までを描いた小説。コンプティークで連載されていたものに、書き下ろしエピソードを加えたものになっている。

作者は『episode.Le☆S☆Ca』も執筆していた古瀬風氏。シンプルな描写がストーリーの邪魔をせず非常に読みやすい。4人全員の心理描写が細かく丁寧で、キャラクターを好きになること請け合いの良書である。

 

本作の主人公は瀬戸ファーブである。QoPを立ち上げた張本人であり、QoPのリーダーであり、楽曲の制作も手掛ける。高い理想と信念を持つ一方でどこか不器用な彼女の心理描写や、キャラクター同士のやり取り、その先にある成長は、本作の最大の見どころといっていい。

一方で、本作の裏主人公として堺屋ユメノという存在が挙げられると思っている。QoPという居場所を誰よりも壊したくなかった彼女の心理描写には、原作アプリでは見ることの出来ない繊細さと女の子らしさが垣間見える。そして何より瀬戸ファーブとの関係性である。瀬戸ファーブのペアというと越前ムラサキが浮かぶが、本作を読んでからというもの正妻ポジションには堺屋ユメノが腰を下ろしている。

 

バンドのメンバー集めから始まり、また楽曲制作もバンド自身で行っているという特性から、波乱や衝突といった起伏が多く、ストーリーとして非常に読み応えがある。人間関係に焦点が当たっているため、キャラクターの内面が見えてきて生き生きと動いている感覚になる。

譲れないものを抱えるメンバーだからこそ生半可な衝突は無く、それを正面から書き切っているところに良さがある。もともと萌えや可愛らしさだけを追求したコンテンツではないが、そうしたコンテンツの性格が本作には色濃く出ていると言える。

 「これは偶像アイドルの物語じゃなく人間バンドの物語です」

 この茂木氏の帯コメントはまさに端的にこの作品を説明していると言えるだろう。

 

本作にはQoPのエピソード以外にも番外編として4Uの楽曲制作秘話が収録されている。また、本編においては羽生田ミトやセブンスシスターズついても言及されているため、ナナシス世界を理解する上でも重要な作品になっていると言える。

あと絵がめちゃくちゃ可愛いです。Episode.01「Are You Gonna Be My Rose」の扉絵が特に素晴らしい(ファームラ案件)。各サブタイトルは洋楽タイトルのオマージュっぽいけど不勉強なのでわからず。

QoPを好きになる一冊なので未読の方は是非。

 

 

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