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映画『聲の形』 感想 成長しないこと、欠落を埋めないこと

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9/17に公開した京都アニメーションの劇場最新作『聲の形』。公開2日目に当たる9/18に見てきた。感想なり考えたことなり以下書いていこうと思います。

 

■内容以外について

まずは踏み込んだ内容以外の部分について。

原作は既読。率直な感想としては、原作から削ってあるエピソードもあったりで、後半で急展開だなと思う部分があった。ただ原作の時点でも何か急な展開だなと思っていた箇所なので、縮めて圧縮するとどうしてもそうなってしまうのは仕方無い部分かなと思う。

重い題材ではあるけど、笑えるシーンや救われる部分もあって、視聴後にキツい気持ちが残るということはなかった。結末部分も原作からだいぶ変わっていて、爽やかな終わり方だった。

演出面に関しては、音や声という、この作品にとって重要になる部分への配慮が為されていて、すごく気を遣って丁寧に作られているなと感じた。

音楽は画面の彩度に合った、淡いパステルカラーを想起させるような、優しくてでも楽しげなBGMが印象的。声優の演技に関しても、早見沙織さんを筆頭にしてすごい。手話のタイミングと合わせた、たどたどしいリズムでの喋り方も、違和感が無いように徹底されていると思う。

 

■内容について

内容の具体的なところの話。大体こっちを書きたくてこの記事を書いてる。

今回劇場版を見て、『聲の形』作品は成長を安易に描くことをしていない、と感じた。この点に絞って以下書きます。

本来、物語作品に求められるものは登場人物の成長だったり変化だったりする。キャラクターが何かしらの障壁にぶつかり、でも苦悩や努力の末に成長して、最終的にそれを乗り越える。感情移入していた視聴者はそこで歓びや勇気や感動やカタルシスを得る。というのが王道とされているストーリー構成。だと思ってる。

 

この作品では登場人物の小学校時代と高校生時代の二つの時系列が重要な時系列として描かれる。小学校時代に一つの『事件』を経験したキャラクターや周りの人々が、年月を経て再び集うことになる。

このキャラクターたちの本質は、高校生になっても小学生時代からあまり成長・変化していないように感じた。そして、作中の時間の流れにおいても、明確な成長や変貌を遂げる人物は少ないと思う。

 

例えば植野は最後まで素直じゃない。でも根はいいやつで、主張には最初から最後まで一貫性があって、自分のルールがちゃんとある。西宮を排除する前にだって一度手を差し伸べようとしている。川井は最初から自分が可愛くて正義感が強くて、でも善意の裏側に紙一重で存在する保身の醜悪さを最後まで自覚しない。佐原は最初から優しくて、でも最後までどこか臆病な自分は根っこの部分でついて回ってる。西宮は率直かつ大胆で、でもどこか不器用で下手くそだ。自分を蔑ろにする態度が他人を戸惑わせてしまう。

石田に関しては、ラストシーンで世界の顔と声を直視出来るようになる。これは明確な変化だけど、内面の成長で掴み取った実績という印象はない。石田は戸惑って涙を流してる。自分を仲間達が迎え入れてくれて、その暖かい場所から見るからこそ見える景色というか、そういう角度とか足場の問題のような気がする。

 

この辺りは俺のこじつけ臭い部分もあるのでアレなんだけど、でも成長物語という感覚はやっぱりなくて、上記したような角度とか足場とかタイミングとか、そういう問題なんじゃないかと思ってる。

成長とか変化って、現実の世界ではそう簡単に起こるものじゃなくて、脆いバランスで成り立ってるところに何かしらの刺激があることで、事態や関係性が好転したり悪化したりしてるだけなんじゃないかと。それを引き起こした刺激というのは、例えば西宮が転校してきたことだったり、石田が贖罪のために色々と動いたことだったり。

 

後半、遊園地のシーンで、植野のこんな台詞がある(うろ覚え)。

西宮さんが来なければ、私たちこんなことにはならなかったよね

これはかなり本質を突いていると思った。

西宮という刺激がなければ、確かにそうだったと思う。たぶんみんな仲良くやってる。役割とか立場とかが今と少し入れ替わるだけで、それなりに楽しくやってるんだろうと思う。揺さぶりによって崩れてしまう脆さは抱えていたとしても、その揺さぶりさえ無ければ、未熟で足りないなりにも、うまくやっていくことは出来たんだと思う。

 

キャラクターたちは全員、最初から最後まで良いやつだと思う。でも同時に、最初から最後までどこか欠けてもいる。この欠けてる部分っていうのを安易に埋めてしまったり、簡単に矯正してしまわないところが、この作品の特徴的な所だと思う。そういう矯正をやらないことで、上記したような関係性の変化がリアルに表現されていたと感じた。

欠落は誰にだってあるし、でもそれもパーソナリティの一つで、そこを伏せたり矯正したりせずにちゃんと描いているからこそ、キャラクターの人間味がはっきりと色濃く描かれていると思う。そういう醜い部分は視聴者だって持ってるから、それを突きつけられた気がしてはっとなる。この作品が強烈なのはそこに通じてる気がする。

そして逆説的に言えるのは、欠落があってもうまくいくケースだってある。どこか欠けている部分があっても、それを克服出来ていなくても、ハッピーエンドを迎えられることはある。劇場版の救いのあるラストはそれを示してくれている(と勝手に思ってる)。

 

そんな感じで終わります。まだうまく言葉に出来てない感じはある。こじつけてしまって頭が固くなってる感じもある。でもある程度ニュアンスが伝わる程度には書けた気がする。

 

 

 

小説 映画 聲の形(上) (KCデラックス ラノベ文庫)

小説 映画 聲の形(上) (KCデラックス ラノベ文庫)

 

小説も出てるっぽい。著者に吉田玲子の名。